心も体も、寒いなら抱いてやる
翌日、花蓮の家に行くと、俊がビィを抱いて降りてきた。

相変わらずぼっさぼさの髪が顔半分を隠していて、表情が読み取れない。

ずるずるのスエットの上下に素足のこの男がどうしたらルカに変わるのか、みのりは首をかしげる。

「昨日は有難う。もう大丈夫みたいだ」

ぼさぼさの髪と同じくらいさえないぼそぼそした声でそういうと、すぐにまたタンタンタンとスローな足音を立てて2階に上がっていった。

一応、お礼を言うために降りてきたらしい。

その様子を見て花蓮が外国人のように肩をすくめる。

「感謝の気持ちが全く伝わってこないけど、あれでも感謝してるの。許してやって」

と話している間に、またもややかましくチャイムを鳴らして田口が現れた。

そして昨日と同じく「もう!」と怒りながら花蓮がドアを開ける。

「ルカは自分の部屋。昨日のお礼、忘れないでよね」という花蓮の言葉に田口は「アイアイサー!」とふざけた返事をして2階に駆け上り、すぐにルカをひっぱって出て行った。

しかし、この“お礼”は当分先延ばしになった。
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