心も体も、寒いなら抱いてやる
「俊君、帰ってる?」

「待ってました」とばかりにドアを開けてくれた花蓮に尋ねる。

「20分くらい前に帰ってきた。みのりは?って聞いても何にも言わないから心配してたとこ。なんかあった?」

「スタジオで置いてきぼりにされた。意味わかんない。入るよ」

靴を乱暴に脱ぎ捨てて、みのりは2階の俊の部屋に駆け上がり、一応ノックはしたが返事は待たずにドアを開けた。

ビィを抱いて床に寝転んでいた俊は器用にビィを抱いたまま、みのりを無視して寝返りを打って背を向けた。

その背中に怒鳴る。

「ちょっと、何で置いていくのよ!」

背中はぴくりとも動かない。

「あのさ、一応仕事としてマネージャーを引き受けてるの。気に障ることがあったなら、ちゃんと説明してよ。勝手に一人で帰るっておかしいでしょ」

1,2,3,4,5、……

少しの沈黙の後、俊がやはりビィを抱いたまま、突如ガバリと体を起こした。
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