心も体も、寒いなら抱いてやる
「で、その間に俊が帰って行ったわけだ」

「そう」

「なるほどねー。I Got it. アイガッチャ。なんで俊がむくれているのかわかった。まったく俊たら子どもなんだから。みのり、大丈夫。気にすることないわよ」

勢いよくみのりの肩をパンとたたき、嬉しそうに「コーヒーでも入れるね」とキッチンに入っていく花蓮についていく。

「今の説明で、私の不手際以外に俊君が怒る理由なんてある?」

「ある」

「何?」

「今は教えてあげない」

ふんふんふ~んと、鼻歌混じりの花蓮は挽いた豆をコーヒーメーカーにセットし、水を注いでスイッチを押す。

「ねえ、本気で落ち込んでるんだから、他に理由があるなら教えてよ」

ごぼごぼという音と一緒に香ばしい匂いが広がる。

花蓮はコーヒーカップを手にしながらみのりに振り向き、「今はひ・み・つ」と、人差し指を動かした。

姉弟そろって意地悪だ。



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