心も体も、寒いなら抱いてやる
「あ、あ……こんにちは。はじめまして……」

「……………………」

無視。

返事はなかった。

しかしみのりの前を通り過ぎるとき、ぽそっと声が聞こえた。

「初めてじゃないけど」

それだけ言うとパジャマの彼は、そのままだるそうに2階へと上がっていった。

初めてじゃない?

どこかで会っただろうか?

と考えてみてもまったく記憶にない。

あんなに印象的な風貌なら、いくらぼけ気味の私でもさすがに覚えていると思うのだけど。

それとも花蓮と一緒にいるときに、たまたまどこかで見られていたのだろうか。

何しに来たのかも忘れ、みのりは冷蔵庫の前で考え続けた。
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