心も体も、寒いなら抱いてやる
「実はね」と、母は務めて軽く切り出した。

「気になることがあって病院で検査してきたの」

「気になること?」

「うん、ちょっとね。そしたらさあ―――」

そこで母は一息ついた。

いやな予感がして、みのりはケーキを切ろうとしていたフォークを置いた。

「そしたら?」

「うん、子宮がんだった」

「え!」

口の周りにクリームをつけたまま太一が声を上げる。

予感が的中し、みのりはショックで言葉がでなかった。

「でもね、初期で見つかったからなんてことはないのよ。やだ、驚かしちゃってごめん。治療すればちゃんと治るから心配しなくて大丈夫だから」

「本当?」

「本当よ」

「母さん、まさか死んだりしないよな」

「太一、そう簡単に私を殺さないでよ」

母の笑顔で緊張感が少しだけほどけた。

それでも不安の塊は、胃のあたりにべたりと張り付いたまま取れなかった。
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