心も体も、寒いなら抱いてやる
「もしかして離婚……するとか?」

「そうなるかもしれない」

「お父さん、他に好きな人ができたとか?」

「そうかもしれない。なんで帰ってこないのか、本当の理由はわからない。でもなんとなく変だなあというのは感じてる。だけど、もしかしたら本当に忙しいだけかもしれないし――」

はっきりさせるのが怖いのだろう。

きっと忙しいだけだ、母もそう信じていたかったのだ。

父の気持ちが離れているのを気づいていながらも、気づかないふりをしているうちに元に戻るのではないかと考えて。

もしくは気づかないふりをしながら、実は少しずつ覚悟しながら。

こういう時の女の嫌な予感はたいてい当たっている。

どんなに離れていても、たとえ顔を合わせていなくても、なぜか不安を察知してしまうのだ。
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