狂愛
秀輝は覚悟を決めたその日、舞香に精一杯の願いを込めて舞香に問いかけた。
「舞香は、好きな男がいるのか?あの男が好きなのか?」
舞香がアーモンドの瞳を揺らし、戸惑っているのが手に取るようにわかる。
舞香の唇が言葉を発する前に塞いだ。
聞きたくない。
聞きたい。
両方の感情が秀輝を追い詰める。
そして、舞香が途切れ途切れでも秀輝に伝えようと言葉を紡ぐ。
「秀く…ん、私、好き、…好きな人…いるよ。」
アーモンドの瞳は快楽に潤みながらも秀輝を真っ直ぐに見つめる。
好きな人がいる?
舞香にそんな男がいることは『許さない』
今舞香と繋がって体を絡ませているのは自分のはずなのに。
自分以外の男なんて見るな。
頼むから、他の男のところには行かないでくれ。
あんなことを聞かなければよかった。
聞かなければ舞香は秀輝とこのままずっと一緒にいてくれたかもしれないのに。
秀輝は激しく後悔しながらも舞香を壊してしまいたくて仕方がなくなった。
すると、舞香が本格的に泣き始めた。
普段はどんなに酷い事をしても滅多に泣かない舞香が。
昔男の子から言われた言葉に反対しようと懸命に「そんなことないもん!しゅうくんはともだちだもん!」と訴えていたあの日を思い出した。
舞香はいつも秀輝を信じてくれていた。周りに何を言われても、秀輝が何を言っても、舞香は何故か当たり前のように秀輝を信じてくれていた。
そして、舞香が泣きながら秀輝を責めるように訴えてくる。
「どうして……秀くん、どうして…秀くんを好きになったら…ダメなの?」
秀輝は一気に胸の中の燃えたぎる嫉妬の炎が小さく可愛らしいものになるのを感じた。
自分の口から間抜けな声が出たが、舞香の言葉に違う炎が再びメラメラと燃え上がる。
それを抑えながら、舞香をなだめて初めて秀輝は舞香に「俺が悪かった。泣かないでくれ。」謝った。
そして、舞香の気持ちを確認して舞香が完全に秀輝のものになったのだ。
いつものように舞香に鬼の形相で詰め寄り無理やり結婚を承諾させると、秀輝は舞香を抱き寄せる。
初めて合った時からずっとずっと欲しかった。
他のどんなものとも交換などできない、この世でたった一人しかいない。
今までもこれからもずっと愛し続けたアーモンドの瞳が愛らしい女の子。
秀輝は相変わらず舞香をいじめるが、二人の間に生まれた3人の子供たちには偽物の"王子様スマイル"ではない、"秀輝の"優しい笑みが向けられ続けた。
そして、子供達に見えないところでは秀輝は舞香をある意味で可愛がりいじめ続け、舞香も嫌がりながらも結局許してしまうのは、『秀くんを信じてるし、愛してるから。』とアーモンドの瞳を潤ませるが、それが秀輝を益々燃えさせることに気付かない舞香は秀輝にとって図太く鈍く愛らしい存在である。
END