僕と8人の王子
まずは僕の身の上話を聞いて欲しい。






僕の父は世界を股に掛けるIT企業、所謂グローバル企業の社長をしている。
一代で会社を築いたらしい。我が父ながら凄い人だ。

父は世界中を飛び回っていて、今はロシアのベンチャー企業と取引するためにモスクワに滞在中だ。昨日ボルシチを食べる父の絵葉書が届いた。

だから普段は、母と祖父と僕の3人で暮らしている。

実のところ、父とはほんの数回しかあったことがない。

しかも父は今だに僕の事を男だと思っている。




事の発端は13年前、僕が3歳の時まで遡る。







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この時、僕は始めて、父という存在を認識した。





この頃には既に一人称は「僕」で確立しており、周囲の誰もそれを咎めることはなかった。
むしろ面白がって僕の髪をショートヘアにしてしまった。


男の子と間違えられても仕方がなかった。



その上、父は跡取り息子が欲しかったらしく、一人っ子だった僕が父の完璧な後継者育成から逃れることは出来なかった。

母からは性別の事は父に黙っているようにと口止めをされた。

というか不在の期間が長く、言う必要も機会も無かったのだ。







それからは、空手や柔道、弓道、茶道、華道など、必要があるのか分からないものまでさせられた。

量は多かったが、昔から運動神経が良く、好奇心も旺盛だったので苦にはならなかった。

塾には時間がなく、通えなかったが、常に成績はトップを維持していた。









...そこまでは良かったんだ。

父が突然、あんなことを言い出すまでは...。



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