僕と8人の王子
ハプニング⁈


それから数日が経って、クラスメイトの顔と名前が一致するようになってきた頃、ある事件が起こった。



その日、僕は日直で先生に頼まれた資料を職員室に持って行く途中だった。

階段を降りているとかさばっていた資料が視界の邪魔をして、階段を踏み外してしまったのだ。

“落ちる!”と思って目を閉じた瞬間。


「おっと、大丈夫か?」


蓮の声がして目を開けると資料は落ちたものの、僕自身は蓮に支えられた………、と言うよりかは持ち上げられるような状態になっていた。


「え⁉︎蓮⁈お、おろして‼︎僕、重いよ。蓮こそ大丈夫⁈」

「あ?俺は大丈夫だよ。しかもお前軽すぎ。ちゃんと飯食ってんのか?つか体持ち上げられたぐらいでそんなに動揺すんな」

「だ、だって最後に誰かに抱っこされたのなんて10年以上前で…」

「10年以上って…。俺、お前より全然重いけどそれこそ4年くらい前まで鬱陶しいほど親父に抱っこされてたんだけど……。」

「ははは、いいねそれ!僕さ、父さんに抱っこしてもらった記憶ないんだ。僕の父さんは一年中仕事で海外に行ってるし帰ってきても、いつも忙しそうにしてる。会える時は、父さんに呼び出された時か、もともと会う約束をしていた時だけ。急に行っても秘書の人に入れてもらえない。それに、抱っこどころか父さんの表情が変わったところもあんまり見たことないんだ」

「そうだったのか。忙しいんだな、日向の親父さん」

「うん。でもあんまり寂しくないんだよ。その分お母さんと一緒にいるからね」

「そうか。日向…。これからは親父さんの代わりに俺が抱っこしてやるぞ!」

「え?いやいや、それはいいよ。さすがに」

「なんだよ。遠慮しなくていいのに」

「いや、本当に。遠慮とかじゃなくて!」

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