琥珀の記憶 雨の痛み
『戻ってこないの?』

『莉緒が帰ってくるって信じて、みんな待ってるよ』


中学から一緒だったチームメイトや良くしてくれていた先輩から、その手の声がかかることも無くなってきた。

みんな私が新しい居場所を見つけたことに気付いたのだ。


もしくは、元々そんなに必要じゃなかったか。

その考えに至った後は、そっちの方がよっぽど可能性が高い気がしている。


構わない。

部活をやめて空いた隙間を、バイトが埋めてくれたから。


覚えることに必死だった。

私もケイと同じように、土日みっちり8時間シフトに入れてもらえるようにもなった。

まだ、1人制の経験はないけれど。


初めてのお給料が振り込まれた時は嬉しかった。

通学で使っていたスニーカーをローファーに履き替え、私服もちょっと増やした。

太腿だけはしっかり隠れるヤツを。



閉店後の仲間たちとのおしゃべりは楽しい。

親にちょっとした嘘を吐いているというスリルが余計にそう感じさせる。

学校の友達とは、絶対に共有できなそうな時間だった。
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