琥珀の記憶 雨の痛み
顔を上げる。

案の定視線が絡んだ、壁に寄り掛かる男。


「新田サンってさぁ」


――初めて呼ばれた名前は、『莉緒』じゃなかった。

小さな声で私だけに発せられたはずのその言葉に、その場の全員が注目した気配が分かる。


嫌だ。

聞きたくない。

絶対やなこと言われる。

言わないで、誰も聞かないで。


そんな願いは、届かない。


「前から思ってたけど、スカート長いよね」

「は……ッ?」


膝まではギリギリ出る長さ、別に校則が厳しいワケじゃない。

富岡高校にも、それなりに制服を着崩す子は結構いるんだ。

もちろんスカート丈も。


みんなの制服と見比べる。

ケイは細く綺麗な足を、その頼りない長さのスカートから堂々と見せつけている。

ナツは細いほうじゃないけど、丸みのある柔らかそうな太ももは女の子らしさを感じさせて可愛い。


確かに野暮な長さなのかもしれない。

でも、これ以上裾を上げたら。


『お前の太ももは――』
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