琥珀の記憶 雨の痛み
「嫌いなんでしょ、きっと私見てると苛々するからああなるんだよ。って言うか……」
彩乃ちゃんも、そんなに好かれているようには見えないんだけど。
ユウくんが彩乃ちゃんに話しかけてるとこ、見たことないし。
――とは、さすがに本人目の前にして言えなくて。
「彩乃ちゃん、あの人のこと怖くないの?」
あの威圧的で冷たい物言いとか、態度とか。
絶対彩乃ちゃんは苦手なタイプだと思うのに、不思議なことに全然怖がっている様子はない。
「ああ、最初は確かに怖かったんですけど。なんか、莉緒さんのことが好きなのに素直になれなくて意地悪しちゃってるのかなぁって思ったら、可愛くって」
「いや、だから……」
彩乃ちゃんは、ナツの時と丸っきり同じ聞く耳のなさで笑っている。
最早否定するのも面倒だ。
ただタケの目だけが気になって、それでも彼の表情を確認するのは怖くて、私は2人から視線を背けた。
「確かに――」
「え」
目を逸らしていたから。
彼がどんな顔をしてそれを言ったのかは、分からなかった。
「あいつが相手なら、なんだかんだで莉緒は幸せになれそうだよね」
――え。
そう、なの?
タケ、本気でそう思ってるの……?
彩乃ちゃんは興奮した様子で、横を向いたまま動けなくなった私には気付かずに「ですよね!?」とはしゃいだ。
「でもなんか先輩のその言い方、まるでお父さんみたいっ!」
と、するりと話題がすり替わる。
けど、もう遅い。
聞かれたくない話を聞かれてしまったし、聞きたくない言葉を聞かされてしまった後だった。
「え、俺が莉緒の親父? それは微妙だなー、彩乃の兄貴みたいって言われるより微妙」
「え、なんですかーソレ。誰に言われたんですか!?」
「食レジの大学生の――名前は知らない」
2人が楽しそうに話す会話は、ちゃんと耳に入っていた。
ああ、きっとそれは有希さんだ、とちゃんと頭が働いていた。
けど、会話に入ろうとは思えない。
「彼女じゃなくて妹なんだぁ、残念」
彩乃ちゃんのその言葉が本気なのか冗談なのかを考える余裕すらなかった。
彩乃ちゃんも、そんなに好かれているようには見えないんだけど。
ユウくんが彩乃ちゃんに話しかけてるとこ、見たことないし。
――とは、さすがに本人目の前にして言えなくて。
「彩乃ちゃん、あの人のこと怖くないの?」
あの威圧的で冷たい物言いとか、態度とか。
絶対彩乃ちゃんは苦手なタイプだと思うのに、不思議なことに全然怖がっている様子はない。
「ああ、最初は確かに怖かったんですけど。なんか、莉緒さんのことが好きなのに素直になれなくて意地悪しちゃってるのかなぁって思ったら、可愛くって」
「いや、だから……」
彩乃ちゃんは、ナツの時と丸っきり同じ聞く耳のなさで笑っている。
最早否定するのも面倒だ。
ただタケの目だけが気になって、それでも彼の表情を確認するのは怖くて、私は2人から視線を背けた。
「確かに――」
「え」
目を逸らしていたから。
彼がどんな顔をしてそれを言ったのかは、分からなかった。
「あいつが相手なら、なんだかんだで莉緒は幸せになれそうだよね」
――え。
そう、なの?
タケ、本気でそう思ってるの……?
彩乃ちゃんは興奮した様子で、横を向いたまま動けなくなった私には気付かずに「ですよね!?」とはしゃいだ。
「でもなんか先輩のその言い方、まるでお父さんみたいっ!」
と、するりと話題がすり替わる。
けど、もう遅い。
聞かれたくない話を聞かれてしまったし、聞きたくない言葉を聞かされてしまった後だった。
「え、俺が莉緒の親父? それは微妙だなー、彩乃の兄貴みたいって言われるより微妙」
「え、なんですかーソレ。誰に言われたんですか!?」
「食レジの大学生の――名前は知らない」
2人が楽しそうに話す会話は、ちゃんと耳に入っていた。
ああ、きっとそれは有希さんだ、とちゃんと頭が働いていた。
けど、会話に入ろうとは思えない。
「彼女じゃなくて妹なんだぁ、残念」
彩乃ちゃんのその言葉が本気なのか冗談なのかを考える余裕すらなかった。