琥珀の記憶 雨の痛み
「気が付いた? みんなアンタに気遣ってんの。我慢してたの。分かる? 富岡がどうだか知らねえけど、ここじゃ異端なんだよアンタ」


――だから、このグループから私を排除したいの?


新しい煙草を箱から出して火を点けるユウくんは、もうこっちを見ようともしない。


「そういうの気付かない鈍さって、どうなの」


また、空気がピリついた。

私を心配するような視線も感じたけれど、誰も口を挟まない。

ユウくんは意に介さずに続けた。


「まあでも、言いすぎたわ。アンタ、ここにいたいみたいだし。悪かったな」

……と、あまり心のこもっていない謝罪、そして。


「とりあえずこの煙草はやめとけ、あんたには勿体ない。――ケイ」


何故そこで、ケイを呼ぶのか。
混乱する。

やだ、嘘だ。


「お前のやれよ、1本」

「ちょっと……なんで私を指名するのよ」


ケイは、迷惑そうに顔をしかめた。
それでもバッグの中に手を入れて、小ぶりのポーチを取り出す。

嘘だ、嘘だ。


「ほら。はじめっから無理しないのよ、莉緒。これ軽いヤツだから。ユウくんのはキツい。やめときな」
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