琥珀の記憶 雨の痛み
DJ『KaZ』とやらの背後からライトがそのヒトと機材を照らしていた。
逆光で顔はよく見えないけど、高校生と聞いた通り確かに同年代っぽくは見える。
ミキシングが天才的だ、と興奮しながらアツシが褒めたけれど、正直よく分からない。
曲がテンションを保ったまま自然に切り替わっていたことに気付いたのは、少し遅れてからだった。
騒音かもと思った音は、思いの外耳触りが良かった。
つまりそれが『天才的』な一番人気DJの成せる技なのかも。
アドレナリン、は、言われてみれば、確かに出ていた。
「タケ!」
アツシの呼びかけで、DJブースの近くに席を取っていた3人がこっちに気付いて手を上げた。
「莉緒、お疲れ」
立ち上がった彼が真っ先に呼んだのは、私の名前だった。
昂った神経は、鳴り続けるBGMの中から彼の声を鮮明に拾い上げた。
どくん、という強い拍動とその後の血流の変化まで、はっきりと感じていた。
点在する小さなテーブルや椅子はお客さん自身がある程度自由に動かして良いようで、テーブル2つを寄せて人数分の席をキープしたまま、彼らは片方のテーブルに身を寄せ合っていた。
タケを真ん中にして、囲むように両側にナツと彩乃ちゃん。
その並びを認識した途端、またひとつ、胸が大きく打った。
「お疲れ様です! お先にいただいちゃってまーす」
「座って座って! ピザまだ温かいよー、お腹減ったでしょっ」
次々にそんな声がかかって、席に促される。
みんなアドレナリンが出てるのか、それとも単にBGMのせいか、いつもよりも少しだけ声が大きい。
当然、彼の隣は空かなかった。
――今日、別に、そういうことを期待していたわけではない。
「すごいお店だね。誰が見つけたの?」
「ホントですよねーっ! お料理も意外と美味しいんです、私気に入っちゃったっ」
「意外って、彩乃ちゃん!」
あはは、と笑いが広がった。
うん、楽しい。
こういうのを、求めてた。
逆光で顔はよく見えないけど、高校生と聞いた通り確かに同年代っぽくは見える。
ミキシングが天才的だ、と興奮しながらアツシが褒めたけれど、正直よく分からない。
曲がテンションを保ったまま自然に切り替わっていたことに気付いたのは、少し遅れてからだった。
騒音かもと思った音は、思いの外耳触りが良かった。
つまりそれが『天才的』な一番人気DJの成せる技なのかも。
アドレナリン、は、言われてみれば、確かに出ていた。
「タケ!」
アツシの呼びかけで、DJブースの近くに席を取っていた3人がこっちに気付いて手を上げた。
「莉緒、お疲れ」
立ち上がった彼が真っ先に呼んだのは、私の名前だった。
昂った神経は、鳴り続けるBGMの中から彼の声を鮮明に拾い上げた。
どくん、という強い拍動とその後の血流の変化まで、はっきりと感じていた。
点在する小さなテーブルや椅子はお客さん自身がある程度自由に動かして良いようで、テーブル2つを寄せて人数分の席をキープしたまま、彼らは片方のテーブルに身を寄せ合っていた。
タケを真ん中にして、囲むように両側にナツと彩乃ちゃん。
その並びを認識した途端、またひとつ、胸が大きく打った。
「お疲れ様です! お先にいただいちゃってまーす」
「座って座って! ピザまだ温かいよー、お腹減ったでしょっ」
次々にそんな声がかかって、席に促される。
みんなアドレナリンが出てるのか、それとも単にBGMのせいか、いつもよりも少しだけ声が大きい。
当然、彼の隣は空かなかった。
――今日、別に、そういうことを期待していたわけではない。
「すごいお店だね。誰が見つけたの?」
「ホントですよねーっ! お料理も意外と美味しいんです、私気に入っちゃったっ」
「意外って、彩乃ちゃん!」
あはは、と笑いが広がった。
うん、楽しい。
こういうのを、求めてた。