琥珀の記憶 雨の痛み
「覚えてんだろうな、あんた」
「え、何を――」
「13番、だからな」
あ……『煙草ワンカートン』のことだ。
「覚えてるけど。一体何するつもり?」
「しばらく黙って、我慢しとけ。あと」
言葉を区切るなり、唐突に腰に手が回されて。
思わず小さな悲鳴が出た。
「俺の連れに見える距離で歩け」
「は、あ!?」
「二度言わすな、黙って我慢しとけ。すぐ終わる」
す、すぐ終わるって。
我慢って!
腰に添えられたその手が、気にならないわけがあるか!
でも、反論の余地すらない。
その手で後ろから押すみたいにして、ユウくんは強引に歩き出したから。
「ちょ! ねえ、離して……」
黙ってろ、という言いつけを破ったからか、ひと際苛立たしそうな舌打ちが下されて首を竦めた。
「言われてたろさっきの奴に、危ねえって。分かってねえのか」
「こ、ここまですることあるの?」
「あるんだよ――もう黙れ、合流する」
「え、待って。やだ、誤解され……」
すぐ終わるんじゃなかったの?
え、それってみんなと合流するまでの間ってことじゃなくて?
怖い顔して口を噤んだまま進み続けるユウくんからは、全く答えが戻ってこなくなった。
何これ、やだ。
どういうつもりなの?
意図を聞き出すことも、片腕だけなのにがっしりとホールドされて、離れることも出来ないまんま、みんなとの距離がどんどん縮んでいく。
彩乃ちゃんがダーツを投げようとしているところだった。
みんなして周りを囲んで、彼女に投げ方を教えているみたいだ。
その輪の中から最初に顔を上げて私たちに気付いたのは、よりによって彼だった。
何か声をかけようとしたのか開きかけた口が、半開きのまま凍り付いたように固まった瞬間を、私はスローモーションで見ていた。
黙ってろ、と、念を押すみたいに耳元でもう一度、ユウくんが小声で囁いた。
「え、何を――」
「13番、だからな」
あ……『煙草ワンカートン』のことだ。
「覚えてるけど。一体何するつもり?」
「しばらく黙って、我慢しとけ。あと」
言葉を区切るなり、唐突に腰に手が回されて。
思わず小さな悲鳴が出た。
「俺の連れに見える距離で歩け」
「は、あ!?」
「二度言わすな、黙って我慢しとけ。すぐ終わる」
す、すぐ終わるって。
我慢って!
腰に添えられたその手が、気にならないわけがあるか!
でも、反論の余地すらない。
その手で後ろから押すみたいにして、ユウくんは強引に歩き出したから。
「ちょ! ねえ、離して……」
黙ってろ、という言いつけを破ったからか、ひと際苛立たしそうな舌打ちが下されて首を竦めた。
「言われてたろさっきの奴に、危ねえって。分かってねえのか」
「こ、ここまですることあるの?」
「あるんだよ――もう黙れ、合流する」
「え、待って。やだ、誤解され……」
すぐ終わるんじゃなかったの?
え、それってみんなと合流するまでの間ってことじゃなくて?
怖い顔して口を噤んだまま進み続けるユウくんからは、全く答えが戻ってこなくなった。
何これ、やだ。
どういうつもりなの?
意図を聞き出すことも、片腕だけなのにがっしりとホールドされて、離れることも出来ないまんま、みんなとの距離がどんどん縮んでいく。
彩乃ちゃんがダーツを投げようとしているところだった。
みんなして周りを囲んで、彼女に投げ方を教えているみたいだ。
その輪の中から最初に顔を上げて私たちに気付いたのは、よりによって彼だった。
何か声をかけようとしたのか開きかけた口が、半開きのまま凍り付いたように固まった瞬間を、私はスローモーションで見ていた。
黙ってろ、と、念を押すみたいに耳元でもう一度、ユウくんが小声で囁いた。