琥珀の記憶 雨の痛み
「まあ、そりゃそうか」
そう言いながら、ユウくんは鼻を鳴らした。
タケが顔を上げて、その顔は憎々しげに歪んでいく。
「腰に2人もぶらさげてたら、守れるもんも守れねえよな」
突然矛先を向けられたナツと彩乃ちゃんが、びくりと身体を震わせて半歩後ずさったのが見えた。
委縮して怯えてるのはナツの方だった。
彩乃ちゃんは泣きだしそうな顔で、ふるふると小刻みに首を横に振った。
――どうして。
2人だって、責められなきゃいけないようなことは何もしていないのに。
やめてよ。もうやめて。
「引っ込んでろよ。俺がいる。もうお前はいらない」
最後通告みたいに、ユウくんはそう言い放った。
同時に力強く引き寄せられて、背中が当たる。
やだ、嫌だ。
振り払おうともがきかけた私は、両腕で絡め取られて拘束された。
後ろから抱きすくめられたみたいな形だけど、実際は全然違う。
ユウくんは、私が暴れないように縛り付けている。
その力が、触れた場所から伝わる体温が、みんなの――タケの視線が、怖かった。
「――言い返せよ、タケ。黙ってんじゃねえよ」
ひと時の沈黙を破るその声を発したのは、思わぬ人だった。
「間違えんな。マジなら譲るな」
突然口を挟んだアツシの袖口を、隣のメグが心配そうに引っ張っている。
彼女の口が小さく動いた。
聞こえなかったけど、口を出すなとか黙ってろとかそういうことだったと思う。
だけどアツシは、黙らなかった。
「お前は何なんだよ、ユウ。じゃあお前は莉緒ちゃんの何なんだよ」
「――それ、なんでお前に言わなきゃなんねえの?」
「……ざ、けんな!」
「アツシっ」
前に踏み出しかけたアツシの腕にしがみつくようにして、彼を止めたのはメグだ。
その瞬間が、どこか他人事のように見えた。
ああそうか、あの2人はちゃんと付き合っているのだから。
だからこんな時に彼を止めるのは、ちゃんとメグの仕事なんだ、と。
そう言いながら、ユウくんは鼻を鳴らした。
タケが顔を上げて、その顔は憎々しげに歪んでいく。
「腰に2人もぶらさげてたら、守れるもんも守れねえよな」
突然矛先を向けられたナツと彩乃ちゃんが、びくりと身体を震わせて半歩後ずさったのが見えた。
委縮して怯えてるのはナツの方だった。
彩乃ちゃんは泣きだしそうな顔で、ふるふると小刻みに首を横に振った。
――どうして。
2人だって、責められなきゃいけないようなことは何もしていないのに。
やめてよ。もうやめて。
「引っ込んでろよ。俺がいる。もうお前はいらない」
最後通告みたいに、ユウくんはそう言い放った。
同時に力強く引き寄せられて、背中が当たる。
やだ、嫌だ。
振り払おうともがきかけた私は、両腕で絡め取られて拘束された。
後ろから抱きすくめられたみたいな形だけど、実際は全然違う。
ユウくんは、私が暴れないように縛り付けている。
その力が、触れた場所から伝わる体温が、みんなの――タケの視線が、怖かった。
「――言い返せよ、タケ。黙ってんじゃねえよ」
ひと時の沈黙を破るその声を発したのは、思わぬ人だった。
「間違えんな。マジなら譲るな」
突然口を挟んだアツシの袖口を、隣のメグが心配そうに引っ張っている。
彼女の口が小さく動いた。
聞こえなかったけど、口を出すなとか黙ってろとかそういうことだったと思う。
だけどアツシは、黙らなかった。
「お前は何なんだよ、ユウ。じゃあお前は莉緒ちゃんの何なんだよ」
「――それ、なんでお前に言わなきゃなんねえの?」
「……ざ、けんな!」
「アツシっ」
前に踏み出しかけたアツシの腕にしがみつくようにして、彼を止めたのはメグだ。
その瞬間が、どこか他人事のように見えた。
ああそうか、あの2人はちゃんと付き合っているのだから。
だからこんな時に彼を止めるのは、ちゃんとメグの仕事なんだ、と。