琥珀の記憶 雨の痛み
「随分自信ありげだね、ユウは。何の根拠があるの」

「なんでって、見てて分かんねえ? コイツは俺といる方が――」

「勝手に決めないで!!」


内側で何かが爆発したみたいに、一気に開放された。
飛び出した大声に驚いたみんなが、一斉に私を見る。

話を遮られた2人――ここまで悠然と場をコントロールしてきたユウくんでさえ、目を見開いていた。


「わ、わた、私が何でユウくんを選ぶのよ!!」

両手で突き飛ばすと意表を突かれたからか、とても力では敵わないはずのユウくんが2歩ほど後退した。


「私が好きなのは――……ッ」


――しまった、勢い余った。
ハッとして口を噤んだけど、もしかしてもう、手遅れ。

自分で呼びこんでしまった沈黙と注目を、この後一体どうしたら……。


「おい、ちゃんと最後まで言えよ。まだ伝わってねえぞ」


ククッと。
さっきまでの緊張感が嘘みたいに、ユウくんが肩を揺らしていた。

え……、それって……。


「ユウ、お前……?」

「だから全部ウソだって、さっき一生懸命そいつが言ってたろ。お前ら揃って、何マジになってんださっきから」


――嘘。
言われた瞬間、力が抜けた。


けど、すぐに浮かんだのは、酷いという思い。

この短時間で、一体何人傷付けたと。
どっきりの仕掛人がネタばらし楽しむみたいにあっさり嘘って言われたって、そんな。


「――なーんだ、騙されちまったなぁオイみんなぁ。はっはっはー。ってなるか、ボケェ!! てめぇ俺にもガンくれやがったな!」


……真っ先に噛み付いたのがアツシで、正直ホッとしていた。
たった今までの空気を壊してちゃんと修復して元に戻せるのは、きっと彼しかいないから。
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