琥珀の記憶 雨の痛み
その後なんとか平常を取り戻した私たちは、最初の予定通り、みんなで少しだけダーツを楽しんだ。
ごねてはみたけど結局私も投げさせられて、矢はボードの隅に当たりはしたけど、刺さらずに跳ね返った。
下手くそなその一投は笑われるでもなく、「彼女のリベンジは当然彼氏が」と、周りにからかわれたのは尚吾くんの方だった。
はやし立てられて次に尚吾くんが投げた矢は、的の中心から真上にずれたところ。
真ん中に近い方が高得点なのだと思い込んでいた私はそれを見て惜しいと思ったのだけど、実はそこは得点が3倍になる『凄い』エリアなのだと教えられた。
後付の口実とは言え元来の企画の名目だったユウくんの正社員昇格祝いは、彼自身が仕出かした直前の暴挙を平然と「面白え余興が見れた」とのたまって相殺された。
まるでなかったことのように差し置かれたそれの代わりに、私と尚吾くんのカップル成立が盛大に祝われてしまって、恥ずかしいような、申し訳ないような……くすぐったいような。
DJブースにいるはずの嶋田くんにはどこまで見られていたのか、或いはたまたまなのかもしれないけど、BGMまで途中からラブソングばかりになったのには参った。
そして私と尚吾くんは、時間にはまだ少し余裕があったけど、盛り上がっていたところで半ば強引に帰されることになった。
「ほらぁみんな、そろそろ2人っきりにさせてあげないと」
そう言いだしたのは、ナツだった。
みんなの目があるし、ナツとちゃんと話をする間など当然なく。
だから私には、まだ後ろめたさや気がかりがあった。
彼女との間にしこりを残すんじゃないかと。
傷付けたのは、間違いないのだから。
そんな私に彼女は「今日は彼のことだけ考えて」と耳打ちし、微笑んで送り出してくれた。
ごねてはみたけど結局私も投げさせられて、矢はボードの隅に当たりはしたけど、刺さらずに跳ね返った。
下手くそなその一投は笑われるでもなく、「彼女のリベンジは当然彼氏が」と、周りにからかわれたのは尚吾くんの方だった。
はやし立てられて次に尚吾くんが投げた矢は、的の中心から真上にずれたところ。
真ん中に近い方が高得点なのだと思い込んでいた私はそれを見て惜しいと思ったのだけど、実はそこは得点が3倍になる『凄い』エリアなのだと教えられた。
後付の口実とは言え元来の企画の名目だったユウくんの正社員昇格祝いは、彼自身が仕出かした直前の暴挙を平然と「面白え余興が見れた」とのたまって相殺された。
まるでなかったことのように差し置かれたそれの代わりに、私と尚吾くんのカップル成立が盛大に祝われてしまって、恥ずかしいような、申し訳ないような……くすぐったいような。
DJブースにいるはずの嶋田くんにはどこまで見られていたのか、或いはたまたまなのかもしれないけど、BGMまで途中からラブソングばかりになったのには参った。
そして私と尚吾くんは、時間にはまだ少し余裕があったけど、盛り上がっていたところで半ば強引に帰されることになった。
「ほらぁみんな、そろそろ2人っきりにさせてあげないと」
そう言いだしたのは、ナツだった。
みんなの目があるし、ナツとちゃんと話をする間など当然なく。
だから私には、まだ後ろめたさや気がかりがあった。
彼女との間にしこりを残すんじゃないかと。
傷付けたのは、間違いないのだから。
そんな私に彼女は「今日は彼のことだけ考えて」と耳打ちし、微笑んで送り出してくれた。