琥珀の記憶 雨の痛み
メグに持ちかけられていたダブルデートは、アツシの一言で無計画に始まった。
バイトの後、たまたま4人が揃っていた時に。
「夏の忘れ物を拾いにいくぞ」と突然言い出した彼は行先も言わずに自転車を走らせた。
けれど、線路をくぐる地下道を抜けて駅の反対側に出た時から、向かっている先は薄々分かっていた。
辿り着いたのは予想通り、夜の浜辺だ。
自転車でも20分程度の距離に海があるのに、言われてみればこの夏ここを訪れていなかった。
アツシはTシャツを脱ぎ捨てて一気に海に飛び込んだ。
「ホント馬鹿、あいつ」と、1人ではしゃぐ彼のことをメグは愛おしそうに笑った。
しばらくすると戻ってきたアツシは今度はメグを道連れにしようとして、本気で拒否する彼女を波打ち際まで無理矢理引っ張って行った。
気が付くと尚吾くんと2人きりになっていた。
そういう時私は、胸の高鳴りを誤魔化すように、「なんか照れるね」とか言ってしまう。
私がそう言うと、彼は必ず「慣れてよね」と笑った。
砂浜に落ちていた手持ち花火の残骸を拾い上げながら、尚吾くんが私だけにこっそりと言った。
「今度は花火しようか」
それはみんなには内緒の、2人きりのお誘いだ。
線香花火が散らす星を、綺麗だね、と言いながら、2人だけで静かに見つめる――想像しただけでうっとりしちゃうような。
波の音がみんなの声をフィルターがかかったように遠くへ運んでいく。
みんなでいるのにふと2人きりのように錯覚するこういう瞬間が、時折あった。
そういう時、隣からすっと手が差し出されて指先が絡まる。
彼も同じように感じてくれているんだと、実感できるそれが嬉しかった。
バイトの後、たまたま4人が揃っていた時に。
「夏の忘れ物を拾いにいくぞ」と突然言い出した彼は行先も言わずに自転車を走らせた。
けれど、線路をくぐる地下道を抜けて駅の反対側に出た時から、向かっている先は薄々分かっていた。
辿り着いたのは予想通り、夜の浜辺だ。
自転車でも20分程度の距離に海があるのに、言われてみればこの夏ここを訪れていなかった。
アツシはTシャツを脱ぎ捨てて一気に海に飛び込んだ。
「ホント馬鹿、あいつ」と、1人ではしゃぐ彼のことをメグは愛おしそうに笑った。
しばらくすると戻ってきたアツシは今度はメグを道連れにしようとして、本気で拒否する彼女を波打ち際まで無理矢理引っ張って行った。
気が付くと尚吾くんと2人きりになっていた。
そういう時私は、胸の高鳴りを誤魔化すように、「なんか照れるね」とか言ってしまう。
私がそう言うと、彼は必ず「慣れてよね」と笑った。
砂浜に落ちていた手持ち花火の残骸を拾い上げながら、尚吾くんが私だけにこっそりと言った。
「今度は花火しようか」
それはみんなには内緒の、2人きりのお誘いだ。
線香花火が散らす星を、綺麗だね、と言いながら、2人だけで静かに見つめる――想像しただけでうっとりしちゃうような。
波の音がみんなの声をフィルターがかかったように遠くへ運んでいく。
みんなでいるのにふと2人きりのように錯覚するこういう瞬間が、時折あった。
そういう時、隣からすっと手が差し出されて指先が絡まる。
彼も同じように感じてくれているんだと、実感できるそれが嬉しかった。