琥珀の記憶 雨の痛み
「ユウは裏表みたいのが嫌いなだけなんだ。言い方は酷かったけど」

「裏、表……? 私、別に……」


ない、とは言い切れない。
本音を誤魔化して波風立てずにその場をやり過ごそうとしてきたのは事実だ。

口ごもると、タケが慌てて「違う違う」と否定する。


「莉緒ちゃんのことじゃなくて。莉緒ちゃんの前でこそこそしてた他の奴らのこと。でもアイツ、人一倍仲間意識が強いんだ。だから莉緒ちゃんの方に矛先が向いただけだと思う」


だからごめんね? と、まるで自分がしたことみたいに謝ってくるタケこそ、仲間意識が強いと思う。

でもそう言われるとなんとなく、ユウくんの剥き出しの敵意に対する恐怖が和らいだ。


「ユウの中には白か黒しかないんだよ。仲間か、それ以外か。今はまだ、莉緒ちゃんは『それ以外』なんだろうなぁ……」

「まだって……なんか、昇格出来る気しないんだけど」

思わずそう本音を漏らすと、タケが苦笑した。


「アイツのこと、苦手?」

「……少し」


ううん、実際は、結構苦手。
初めて見た時から、ちょっと怖いと思ってた。
あんまり近づきたくないなって。


「それね、多分伝わるんだよ向こうにも。ちょっと苦手意識取っ払ってみてよ。言いたいことは我慢しないでいいし、でも否定するばっかりじゃなくて、認めるところは認めて欲しい」

「――認める……」


タケの言葉を拾って呟いた私に、彼はにこりと微笑んで頷いた。
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