琥珀の記憶 雨の痛み
「さぁさぁ! この勢いに乗って、キミらも後に続きたまえ!」


調子に乗ったアツシに突っ込みを入れるのは、これからはタケではなくてメグの役目になるのかもしれない。

早速メグに小突かれて渋い顔を見せたアツシのことを、その場にいたみんなが笑った。


ケイとユウくんは今日はいない。

「私、邪魔じゃない!?」とナツが何度も確認しながら、結局3人は最初に話していた通りカラオケに行くみたいで。

付き合いたてのカップルの中に快く受け入れられたナツは、力強くガッツポーズをしながら、

「告白のシチュとか台詞とかぁ。沢山聞き出してくるからねっ!」

とにこにこ笑って私に向かって宣言した。


「あはは、報告楽しみにしてる。行ってらっしゃい!」

「うん、またねぇ莉緒! タケも!」


お疲れ、ばいばい、と騒がしく一通りの別れの挨拶が済み3人が雨の向こうへ消えていくと、一気に静寂が戻った。

ううん、傘を叩く雨粒の音だけがいやに響いている。
私とタケの上で、それぞれ鳴る音が。


「付き合ってんだね、驚いた」

傘の下から見上げながらそう言うと、タケは目を細めて頷く。

「アイツ、ずっと前からメグに惚れてたからなぁ。上手くいったみたいで良かったよ」


帰ろう、と促されて、ゆっくり歩きはじめる。
さっきまでは遠慮するつもりだったのに、結局送ってもらう流れだった。
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