琥珀の記憶 雨の痛み
染み付いている。
物心ついた頃からずっと、言われ続けてきた母の考えが。

私の中の無意識に、すり込まれている。


微かに、僅かに、でも確かに。
私の中に、ある。

一高を、偏差値の低い学校を、そこの学生を。
未成年のクセに当たり前の顔で煙草を吸うみんなを、夜にゲームセンターやカラオケに繰り出すみんなを。


――自分よりも『下』の人間と見下す、驕った考えが。


そもそもそう言う教えだっただろうか、母にすり込まれたのは。
違う、と思う。

お母さんが教えたかったのは、女であっても誰にも頼らずに1人で生きられるだけの経済力を得るための方法、だ。

私を抱えて、ずっと1人で生きてきた母ならではのその考えは、理に適っている気もするんだけれど。


いつからか少しずつ、それが歪んだ、ような。
歪めたのが母なのか、私が勝手に解釈を間違えたのか、元々そうだったのかなど分からないけれど。


『こう在りたい』『こう在って欲しい』が行き過ぎて『こう在らねばならない』に、そしていつの間にか、その理想とかけ離れた相手を『存在悪』とみなしている、ような。


そんな価値観が母の中に――そして、私の無意識の中にも。
認めたくはないけれど、確かに、ある。
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