臆病者の鬼遊び
七海子
廃屋でうずくまっている夢を見た。
私はその夢の中で、まだ小さな子供で、火がついたように、大きな声で泣き喚いていた。
まわりは薄暗くて、誰もいない。
おかあさん、か、おとうさん、と叫んでいた気がする。
もしくは、その両方だったかもしれない。
突然、壁を破って何かが私の目の前に躍り出た。
肩を上下させるように、荒く呼吸する猫背気味の大きな体、
ギラギラと赤く凶悪な二つの目、異様に長い舌が、だらりと口からはみ出していた。
……それはとても人間とは思えなかった。
あまりのことに、私は土煙にむせ返りながら、私は更に大きな声で泣いた。
その人間とは思えない何かの頭には、二本の角が生えていた。
黒い、黒い角だった。
角の生えたなにか、の目に、私が映った。
ああ、……もう駄目かもしれない。
諦めたところで、目が覚めた。
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