臆病者の鬼遊び
「リンタロ君が、助けてくれたのよ」
「そう、なんだ……」
「リンタロ君に、ちゃんとありがとう、って言うのよ」
「う、うん……」
「言うのよ?」
「わかったってば……!」
スポーツドリンクを飲み干すと、七海子はふうっと溜め息をついた。
何だか……倫太郎に多大な迷惑と、借りを作ってしまったように思う。
簡単にしらばっくれて、いられないほどの……。
どうしよう。
倫太郎は、ものすごく怒っていた。
自分が話しかけたりなんかしたら、もっと怒るのではないだろうか。
七海子がどうにか倫太郎に話しかけない方法を考えていると、花代さんが呆れて言った。
「……ねえ七海子。
そろそろ、浴槽から出たら?」
同時に七海子は、くしゃみをした。