臆病者の鬼遊び
「……この件なんですが……」
倫太郎の部屋から、彼だけの声がした。
「ええ……ですから、あいつには無理です……」
電話をしていた。
相手は、木崎家の当主だった。
倫太郎の声は、やや緊張気味だ。
「さっきだって、あいつは無闇に死にかけたんですよ。
勝手に押し入れに閉じこもって……! 」
すると電話口から、かっかっかと笑い声が聞こえてきた。
笑い事じゃない、と怒りたくなる。
「とにかく……ドジでのろまで意気地なしで、本当に困っているんです。
これじゃとても、例の殺人『鬼』を追う事なんて……」