臆病者の鬼遊び
そこまで言ったところで、倫太郎は名前を呼ばれた。
そして……。
「――分かりました、父さん……」
やがて倫太郎は、諦めたように返事をした。
電話を切れてから、倫太郎は憎々しげに言った。
「盗み聞きか」
襖の向こう――廊下側から、びくりと焦る気配がした。
「……入れ」
短い命令をすると、七海子がおずおずと襖を開けた。
さすがにもうパジャマだったが、髪はまだ少し湿っていた。
「……夜遅く、すいません」
倫太郎は部屋の真ん中で、あぐらをかいていた。
既に、寝間着の和服に着替えていて、例によって不機嫌そうに、夜中の訪問者を迎えた。