臆病者の鬼遊び



「何の用だ」
 

切り出すと、七海子は露骨に恐縮していた。
 

ぎくしゃくしながら正座をすると、


「……あの、さっきは……ありがとうございました」
 

土下座じみた頭の下げ方をした。


「別に、いい……」
 

ぶっきらぼうに答えたが、七海子は頭を上げなかった。


「頭を上げろ」
 

憮然となって言うと、ようやく七海子はゆっくりと起き上がった。


こいつ、そこまで言わなきゃ分からないのか、と思う。

 
七海子は、目線を下に落としていた。


じっと耐えるように、俯いている。


「……俺が、怖いか」
 

尋ねると、彼女はぎくりと動揺した。


ここまではっきりしていると、いっそ清々しい。




< 104 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop