臆病者の鬼遊び
倫太郎の頭部には、すらりとした二本の角が生えていたのだ。
彼の角は、透明な色をしていた。
そして、七海子以外の誰にも、その角を可視する事ができないようだった。
七海子は倫太郎の角と、黒板にでかでかと書かれた彼の名前を見て、すべてを理解した。
(本家の鬼……っ!)
すると、七海子が叫ぶ前に、倫太郎が動いた。
つかつかと七海子の前まで歩み寄ると、倫太郎は彼女の胸倉をぎゅむっと掴んだ。
「おい」
「は、はい……?」
「お前、何も聞いてないのか……!」
ぐいっと掴み上げられ、七海子は椅子から足が浮いてしまった。