臆病者の鬼遊び
「どうしたの?」
「あのね、えっと……相談があるの」
花代さんは、冷蔵庫からよく冷えた麦茶を出し、コップに注いでいた。
飲む? と訊いたが、七海子は首を横に振った。
「……やっぱり私、……鬼と戦わなきゃ、駄目なのかな」
「リンタロ君に、言われたの?」
それ以外に無いだろうな、と思いながら、花代さんは言った。
七海子も、素直に頷く。
「それで、花代さんはどう思うかな、って……」
「どうして私に訊くの?」
花代さんは、麦茶をぐいぐい飲んだ。
口調は、優しくも冷たくもない。
だけど、七海子はすこし、つき放されたように感じてしまう。
「花代さんは、あの事件が起こってからも……私にきつく言わないから どうしてなのかと思って」
通常、連続的に殺人や傷害が発生した場合、木崎家はまず『鬼』を疑い、行動を起こす。
凶悪犯が滅多に現れないのは、そうして未然に防がれる事案も多いのだ。