臆病者の鬼遊び
「七海子が、やらなきゃだめだと思うなら、そうすればいいと思うわ」
「……私にも分かってるの。
本当は、きちんと使命を全うしなきゃいけないこと。
でも、なんだか……鬼の事を考えるだけで、怖いの……。
怖くて、動けなくなる……」
七海子は突然、震えだした。
うっすらと、涙すら浮かべている。
どうして、急にそんなふうになったのか、七海子自身にも分からない。
けれど、必死にそれを誤魔化した。
そこまで弱虫だと思われたくなかった。
「私はね、無理に動かなくてもいいと思う」
花代さんは、麦茶のボトルを冷蔵庫にしまった。
「……本家への言い訳だって、どうにでもなるわ。
私だって、木崎家の人間だけど『鬼』と戦ったことない。
だけど……七海子が、リンタロ君のために戦いたいと思うなら、戦うべきだと思うわ」
「倫太郎君のために……?」
七海子は、うーっと考え込んだ。
無闇に、悩んでいる。