臆病者の鬼遊び
 




家での倫太郎は、食事の時以外、自室に閉じこもっている。


だから、そこで何をしているのか、七海子は知らない。
 

ただし、学校での関係は相変わらずだった。
 

倫太郎目的で教室を訪れる生徒は減ったが、倫太郎は未だに、孤高を保っている。


近頃は、彼をクラスになじませるのを先生も諦めたという話だった。



「来週からテストか……」
 

四限目が終わり、まっちが言った。


そういえばそうだった、と七海子も慌てて予定表を見た。


「数学ぐぬぬ……」


「ああ、七海子いつも、数学だけは赤点ギリギリだもんね。


文系は常にトップのくせに」


「数学なんて、九九さえ言えれば困らないもん……」


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