臆病者の鬼遊び
七海子は、俯いてしまった。さすがに、気まずくなったのか、男の子達の野次も止む。
そんな中、誰かが椅子を引く音がした。まっちが、出動してくれたのかと思った。
しかし、七海子の手を取ったのは、――倫太郎だった。
「……だったら何?」
倫太郎は、野次を飛ばしまくっていた男の子達をまっすぐに見つめると、事も無げに言い放った。
そして、
「行くぞ」
呆気にとられる七海子をぐいぐい引っ張って、教室を出て行ってしまった。
立ち上がりかけたまっちが、どさんと椅子に落ちるように座った。
「七海子……あいつ、本当に、君の何なの……」
その小さな呟きは、誰の耳にも届かないまま、宙に消えた。