臆病者の鬼遊び
チャイムが鳴ったと同時に、倫太郎の話も終わった。
しかし、七海子は立ち上がろうとも、弁当箱を仕舞おうともしなかった。
肩を揺すぶってみたが、応答は無い。
倫太郎は、微動だにしない七海子を覗き込んだ。
よほどショックだったのか、彼女は虚ろな目に、声も無く涙を湛えていた。
「……刺激が強すぎたか」
独り言のようにぼそりと言うと、倫太郎は七海子の頬を指でこすった。
ハンカチを持っていないのが悔やまれる。
「泣くなよ……」
宥めるが、七海子は首を横に振るだけだった。