臆病者の鬼遊び



タビちゃんは、うす茶色で脚の先だけが白い靴下猫だ。


『まるで足袋を履いているようだったから』という安直な理由で名付けたと聞いた。
 

タビちゃんは、まっすぐに歩いて来ると、七海子の前まで来てもう一度鳴いた。
 

『縁側に上げてくれ』……という意味なのは、すぐに分かった。


ここが快適な場所である事を一瞬で見抜いたらしい。


恐るべき、猫。


「もう、ちょっとだけだよ……?」
 

タビちゃんの熱い眼差しに根負けした七海子は、苦笑しながらタビちゃんを抱き上げた。


タビちゃんの訪問は、今日に限った事ではない。
 

しかし、縁側に降り立ったタビちゃんは、七海子が作業しようと思っていた、


まさにその場所に、ごろんと横になった。


仕方ないので、七海子は自分のスペースを少しずらし、生地のスクラップをつくっていく。


< 129 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop