臆病者の鬼遊び
タビちゃんは、うす茶色で脚の先だけが白い靴下猫だ。
『まるで足袋を履いているようだったから』という安直な理由で名付けたと聞いた。
タビちゃんは、まっすぐに歩いて来ると、七海子の前まで来てもう一度鳴いた。
『縁側に上げてくれ』……という意味なのは、すぐに分かった。
ここが快適な場所である事を一瞬で見抜いたらしい。
恐るべき、猫。
「もう、ちょっとだけだよ……?」
タビちゃんの熱い眼差しに根負けした七海子は、苦笑しながらタビちゃんを抱き上げた。
タビちゃんの訪問は、今日に限った事ではない。
しかし、縁側に降り立ったタビちゃんは、七海子が作業しようと思っていた、
まさにその場所に、ごろんと横になった。
仕方ないので、七海子は自分のスペースを少しずらし、生地のスクラップをつくっていく。