臆病者の鬼遊び
 


音も無く近寄って来た倫太郎に、


「こら、何してる!」


「あいたっ!」
 

紙の束で頭をスパンとやられた。


「り、倫太郎君……」
 

振り向くと、背後で丸めた新聞紙を携えた倫太郎が、仁王立ちしていた。


「後方不注意」


「な、何それ……」


「常に前後左右に気を配れって意味だ」


「………」


「ほら、今日の新聞」


「あ、ありがとう……」
 

厳しいなぁという不満を飲みこんで、大人しく受け取った。
 

ふと、タビちゃんが起き上がり、倫太郎を凝視しているのに気付いた。
 

彼等は、初対面だった。


「……なんだ、この猫」


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