黒太子エドワード~一途な想い

国王夫妻への報告

「まぁ! まぁ! やっとね! やっと、エドワードの気持ちが通じたのね! 良かったわ!」
 ジョアンを連れて、黒太子エドワードが、彼女の喪が明け次第、結婚すると国王夫妻である両親に報告すると、母フィリッパはそう叫んで、大喜びした。
「ああ、これで、あの可愛いトマスちゃんのことも、正式に孫として可愛がってあげられるのね!」
「お前は既に、孫のように可愛がっておるではないか! 先日もすぐ、乳母と家庭教師を用意してきおったし……」
 苦笑しながらそう言ったのは、父のエドワード3世であった。
 どうやら、フィリッパはそのことで許可でも貰いに来たのか、彼の執務室を訪れていて、共に報告ということになったのだった。
「まぁ! あなただって、フランスとの戦の最中だというのに、こっちに戻って来ていらっしゃるじゃありませんの! 二人のことが心配だったのでしょう?」
「馬鹿を申すな! 私は議会との連絡があって、たまたま帰って来ただけだ! すぐに戻るぞ!」
「あら? 捕虜になっているジャン2世と取引をして、休戦するのではなかったのですか?」
 フィリッパのその言葉に、エドワード3世は顔をしかめた。
「それもある。そうするにしても、議会の許しは得ねばならんからな。まったく、面倒なことだが……」
「じゃあ、ついでにエドワードの結婚も報告すればいいのではなくて?」
 目を輝かせてそう言うフィリッパに、エドワード3世は苦笑した。
「まぁ、言う位は構わぬが……そう簡単にはいかぬと思うぞ。ソールズベリー伯との婚姻は無効ということになったが、ジョアンは一度結婚し、子供もおるのだからな」
「又、そのことですか……」
 黒太子エドワードはそう言うと、ため息をついた。
「又とは、何だ! 私がこのことを言ったのは、これが初めてだぞ? 大体、他の王族等との縁談も断ってやっておるというのに、何だ、その言い方は!」
「申し訳ありません、父上。先程までそのことで、さんざんジョアンと話し合っていたもので、つい……」
「ほう、そうか」
 そう言うと、エドワード3世はニヤリとした。
「それで? どうやって、反対する貴族達を説得することになったのだ?」
 そのエドワード3世の問いに、黒太子とジョアンは顔を見合わせた。
「何だ? 説得する方法を二人で考えたのではなかったのか?」
「それが、その……ジョアンが承知してくれるまで、ずっとひざまずいておりましたもので天店」
「な、何だと!」
「まぁ、素敵!」
 ほぼ同時に声が上がったが、父と母では言ったことは正反対であった。
「フィリッパ、お前、今、何と申した?」
 あきれ顔でエドワード3世がそう尋ねると、彼女は微笑みながら答えた。
「素敵、と言ったのよ。悪い? でも、浮いた噂1つも無かったエドワードが必死でジョアンを口説いたんですもの! ここは、私位は褒めてあげないとね!」
「まったく、女はこれだから……!」
 エドワード3世は、そう言うと頭を抱えた。
「あら、これだから、何ですの、あなた?」
「ああ、もう! わしはジャン2世と交渉に行くから、後はお前達で好きなようにしなさい!」
「まぁ! では、結婚の準備をしても構いませんのね?」
「もう、か? 昨日、葬儀をしたばかりではなかったか?」
 目を丸くしながらエドワード3世がそう尋ねると、ジョアンも頷いた。
「左様でございます。ですから、結婚は、喪があけてからにしようと思っております」
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