黒太子エドワード~一途な想い
オリヴィエ・ド・モーニー
一方、フランス王シャルル5世の元に急いだパウロはというと、その侍従の元ベルトラン・デュ・ゲクランの同僚、オリヴィエ・ド・モーニーと会うことが出来、主人であるカルロス2世からの手紙を渡すことに成功していた。
「俺に……襲え、と? 妙な依頼だな。さっぱり訳が分からん!」
厩舎で馬の世話をしていたところに声をかけられたオリヴィエは、その場で手紙を開けると、顔をしかめながらそう言った。
「旦那様は、そんな依頼をしなすったので?」
「ああ。何だ? 知らずにここまで来たのか?」
「はい……。言う通りにしないと、暴れられるもんで……」
パウロが困った表情でそう言うと、オリヴィエはため息をついた。
「可哀想になぁ……。分かったよ。陛下に少し休みをもらって行くようにしてやるよ!」
オリヴィエのその言葉に、思わずパウロの表情が明るくなった。
「ありがとうございます!」
だが、彼の主、シャルル5世は不満らしく、仏頂面だった。
何せ、1365年3月にアヴィニヨンで条約を結び、カルロス2世が所有していたムーランやマント及びロングウィル伯領と南仏のモンペリエを交換したのである。
そんな中、今や侍従となり、子供達の警備も担当しているオリヴィエ・ド・モーニーに追いはぎのような真似をさせるというのが気に食わなかったのである。それも自分が黒太子にカスティリャに連れて行かれない為、なのだから性質が悪い。
「何の為に条約を結んだと思っておる! 私を馬鹿にするにも程があろう!」
シャルル5世がそう叫んで机の上の書類をドンと叩くと、オリヴィエが何度も頭を下げた。
「申し訳ありません、陛下! 私が勝手に引き受けてしまったばかりに……」
「ああ、もうよい、モーニー! そのように何度も頭を下げるな!」
「ですが……」
「どうせ泣きつかれたのであろう? 使いで来たという男に」
「泣きつかれたと申しますか、言うことをきかないと暴れて大変だと言われまして……」
モーニーのその言葉に、シャルル5世は頭を抱えた。
「やはり、泣きつかれておったのではないか!」
「はぁ……」
「まぁ、よいわ。そこがそなたの良い所でもあるのだしな」
「ありがとうございます」
そう言って素直にモーニーが微笑むと、シャルル5世は苦笑した。
「しかし、お前にわざと襲わせたという噂が流れれば、もう誰もあのような奴を相手になどせんだろうに、愚かな奴だ!」
シャルル5世のその言葉は、現実となった。
「何と言う愚か者だ! 父上のおっしゃられた通り、やはり相手にする価値など無かったな!」
ナバラの近くまで遠征してきていた黒太子エドワードはそう言うと、その端正な顔をしかめた。
「俺に……襲え、と? 妙な依頼だな。さっぱり訳が分からん!」
厩舎で馬の世話をしていたところに声をかけられたオリヴィエは、その場で手紙を開けると、顔をしかめながらそう言った。
「旦那様は、そんな依頼をしなすったので?」
「ああ。何だ? 知らずにここまで来たのか?」
「はい……。言う通りにしないと、暴れられるもんで……」
パウロが困った表情でそう言うと、オリヴィエはため息をついた。
「可哀想になぁ……。分かったよ。陛下に少し休みをもらって行くようにしてやるよ!」
オリヴィエのその言葉に、思わずパウロの表情が明るくなった。
「ありがとうございます!」
だが、彼の主、シャルル5世は不満らしく、仏頂面だった。
何せ、1365年3月にアヴィニヨンで条約を結び、カルロス2世が所有していたムーランやマント及びロングウィル伯領と南仏のモンペリエを交換したのである。
そんな中、今や侍従となり、子供達の警備も担当しているオリヴィエ・ド・モーニーに追いはぎのような真似をさせるというのが気に食わなかったのである。それも自分が黒太子にカスティリャに連れて行かれない為、なのだから性質が悪い。
「何の為に条約を結んだと思っておる! 私を馬鹿にするにも程があろう!」
シャルル5世がそう叫んで机の上の書類をドンと叩くと、オリヴィエが何度も頭を下げた。
「申し訳ありません、陛下! 私が勝手に引き受けてしまったばかりに……」
「ああ、もうよい、モーニー! そのように何度も頭を下げるな!」
「ですが……」
「どうせ泣きつかれたのであろう? 使いで来たという男に」
「泣きつかれたと申しますか、言うことをきかないと暴れて大変だと言われまして……」
モーニーのその言葉に、シャルル5世は頭を抱えた。
「やはり、泣きつかれておったのではないか!」
「はぁ……」
「まぁ、よいわ。そこがそなたの良い所でもあるのだしな」
「ありがとうございます」
そう言って素直にモーニーが微笑むと、シャルル5世は苦笑した。
「しかし、お前にわざと襲わせたという噂が流れれば、もう誰もあのような奴を相手になどせんだろうに、愚かな奴だ!」
シャルル5世のその言葉は、現実となった。
「何と言う愚か者だ! 父上のおっしゃられた通り、やはり相手にする価値など無かったな!」
ナバラの近くまで遠征してきていた黒太子エドワードはそう言うと、その端正な顔をしかめた。