黒太子エドワード~一途な想い
四章 ブルターニュ継承戦争

教皇からの手紙

「……宜しいのですか、殿下?」
 それを少し離れた所から見ていたジョン・チャンドスは、すぐ横の黒太子にそう尋ねた。
「ああいうことは、私よりも母上の方が長(た)けてらっしゃる。下手に手を出すより、任せておいた方が無難だろう」
「そうですな」
 そう言うと、チャンドスは微笑みながら頷いた。
「そう言えば殿下、教皇猊下より書状が届いておりましたぞ」
「何? もう返事が来たのか? あの女将、ヤルな!」
 黒太子がそう言いながら口の端に少し馬鹿にしたような笑みを浮かべると、チャンドスは続けた。
「そうそう! ジョアン姫からも手紙が来ておりましたぞ! お妹君の方ではなく、ソールズベリー伯夫人の方の、ですが……」
 その名に、ピクリと黒太子の頬が動いた。
「ジョアンが私に何の用だ?」
「さぁ……。教皇猊下からの書状も随分分厚く、国王陛下にまで親書が届いたと聞いておりますので、まずは目を通されてごらんになってはいかがかと思いますが……」
「そうだな……。そうしよう」
 黒太子はそう言うと、すぐにその場を後にし、自分用のテントに向かった。
 チャンドスもそれに続く。
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