黒太子エドワード~一途な想い
「分かった。燃やすのはやめよう……」
彼はそう言うと、手紙を蝋燭から離し、小さな木箱に入れた。
「そういえば、チャンドス、ブルターニュの方はどうなっておるのだ?」
「5年前にジャン・ド・モンフォールは亡くなっておりますので、その嫡男をたて、妻が代わりに戦っていると聞いております。実際は、ノーザンプトン伯とその副官が仕切っておるのでしょうが。奥方は、どうも感情の起伏が激しく、冷静な判断が出来ない上に、嫡男はまだ10歳だそうですからな」
「10歳か……。だが、その2年後には、ジョアンはもう結婚しておったぞ?」
「王族の結婚は早く、自分の意志で行なわれるのは少のうございますぞ」
「チャンドス、あやつは自分の意志で、しかも秘密裡に結婚しおったのだぞ! 普通の政略結婚とは異なっておろう!」
「それはそうですが、年齢的にはご結婚されてもおかしくはない年齢ということです。現に、王妃様がご結婚なさったのも14歳位ではありませんでしたか?」
「12歳と14歳では違うであろう!」
「左様でございますか? 私などから見れば、同じように子供ですが……」
「それはそうだろう。今の私から見ても、それは同じだ。もう20歳になれば、どちらも子供にしか見えん。だが、あの時は違っておったのだ。ジョアンが12歳で、私は10歳だったのでな」
「殿下……」
心配そうに黒太子の顔を見ながらチャンドスがそう言うと、彼は慌てて作り笑いを浮かべた。
「すまない。又、余計なことを喋ってしまった。ブルターニュの話であったな?」
「はい……。先日、フランス王を名乗っていたフィリップ6世も亡くなり、ジャン2世が即位したと聞いております。それも含めて、今後の戦況にどう影響していくかが気になりますな」
「うむ……。確かに、どういう男なのかは、興味があるな」
「噂によりますと、善良だとか。何せ、『善良王』と呼ばれておる位ですので、人情に篤いのでしょう。13歳の時に結婚した后との間に、既に4人の男子も授かっておるそうです」
彼はそう言うと、手紙を蝋燭から離し、小さな木箱に入れた。
「そういえば、チャンドス、ブルターニュの方はどうなっておるのだ?」
「5年前にジャン・ド・モンフォールは亡くなっておりますので、その嫡男をたて、妻が代わりに戦っていると聞いております。実際は、ノーザンプトン伯とその副官が仕切っておるのでしょうが。奥方は、どうも感情の起伏が激しく、冷静な判断が出来ない上に、嫡男はまだ10歳だそうですからな」
「10歳か……。だが、その2年後には、ジョアンはもう結婚しておったぞ?」
「王族の結婚は早く、自分の意志で行なわれるのは少のうございますぞ」
「チャンドス、あやつは自分の意志で、しかも秘密裡に結婚しおったのだぞ! 普通の政略結婚とは異なっておろう!」
「それはそうですが、年齢的にはご結婚されてもおかしくはない年齢ということです。現に、王妃様がご結婚なさったのも14歳位ではありませんでしたか?」
「12歳と14歳では違うであろう!」
「左様でございますか? 私などから見れば、同じように子供ですが……」
「それはそうだろう。今の私から見ても、それは同じだ。もう20歳になれば、どちらも子供にしか見えん。だが、あの時は違っておったのだ。ジョアンが12歳で、私は10歳だったのでな」
「殿下……」
心配そうに黒太子の顔を見ながらチャンドスがそう言うと、彼は慌てて作り笑いを浮かべた。
「すまない。又、余計なことを喋ってしまった。ブルターニュの話であったな?」
「はい……。先日、フランス王を名乗っていたフィリップ6世も亡くなり、ジャン2世が即位したと聞いております。それも含めて、今後の戦況にどう影響していくかが気になりますな」
「うむ……。確かに、どういう男なのかは、興味があるな」
「噂によりますと、善良だとか。何せ、『善良王』と呼ばれておる位ですので、人情に篤いのでしょう。13歳の時に結婚した后との間に、既に4人の男子も授かっておるそうです」