黒太子エドワード~一途な想い
ベルトランの縁談
ベルトランより一回り年下で、身長も10cm以上低いオリヴィエが真面目な表情でそう言うと、ベルトランも目を丸くした。
「何だって? 俺の縁談? 何だ、そりゃ!」
「ここの隣町のヴィトレに住む女城主ティファーヌ・ラグネルって覚えてないか? 小さい頃、兄さんに助けられたって言ってたけど……」
「ヴィトレのティファーヌ?」
ベルトランが大きな目をクルクル回転させてその名を呟くと、オリヴィエはじれったそうに続けた。
「城主であったお父さんを亡くし、一人で泣いていたところを近所の子供にからかわれ、そこを兄さんに助けてもらったんだとか。小さかったので、そのまま担いで、城まで連れて来てくれたって言ってたよ」
「ああ! そういえば、そういうこともあったなぁ!」
のんきにそう言うベルトランに、オリヴィエは苦笑した。
「思い出すのが遅いよ、兄さん!」
オリヴィエが少しムッとした表情でそう言うと、ベルトランは悪びれもせず、二カッと笑いながら頭を掻いた。
「まぁ、そう言うな、オリヴィエ! それより、あの時の小さい子はどうなったんだ? いい感じの女にでもなったか?」
「ああ。品のいい、優しい感じの女城主様になってたよ! 無論、美人の、ね!」
「ほお! そうか、そうか! で、俺との結婚は?」
その言葉に、オリヴィエはにやりとした。
「勿論、承知してくれたよ! 彼女にとって兄さんは子供の時に助けてくれたヒーローだったらしくて、ずっと好きだったらしいよ」
「待て! ずっと好きって、まさか今までずっと独身だったのか?」
「そうだよ」
「いくつになってたんだ?」
「確か、31だったか……」
オリヴィエのその答えに、ベルトランの顔色が変わった。
「マジでそんな年まで独身だったのか? 俺なんかを想って……」
「だから、そうだって言ってるじゃないか!」
オリヴィエが青くなった兄に少し目を丸くしながらそう言うと、彼は荷物をまとめだした。
といっても、街中で人々と話をしただけなので、槍を持ち直し、着ている服を正す位だったが。
「えーと、兄さん……?」
その姿に驚いてオリヴィエがそう声をかけると、彼は珍しく真面目な表情で尋ねた。
「オリヴィエ、その一途な別嬪さんの城って、ヴィトレに行けばすぐ分かるか?」
「分かると思うよ。小さいけど、灰色の石造りだし。他は皆、白壁に赤い屋根の農家だからな」
「そうか、分かった!」
そう言うと、ベルトランはすぐにそこを後にしようとした。
「待って、兄さん! 今からラグネル嬢の所に行く気?」
「そのラグネルっていうのが、俺のことを想って、独身を貫いてきた別嬪さんのことだったら、そうだよ。そんな話を聞いて、放っておけるかよ!」
「だけど、その……その恰好で?」
オリヴィエのその言葉に、その場に居た者達も皆、ベルトランの姿を眺めた。
「何だって? 俺の縁談? 何だ、そりゃ!」
「ここの隣町のヴィトレに住む女城主ティファーヌ・ラグネルって覚えてないか? 小さい頃、兄さんに助けられたって言ってたけど……」
「ヴィトレのティファーヌ?」
ベルトランが大きな目をクルクル回転させてその名を呟くと、オリヴィエはじれったそうに続けた。
「城主であったお父さんを亡くし、一人で泣いていたところを近所の子供にからかわれ、そこを兄さんに助けてもらったんだとか。小さかったので、そのまま担いで、城まで連れて来てくれたって言ってたよ」
「ああ! そういえば、そういうこともあったなぁ!」
のんきにそう言うベルトランに、オリヴィエは苦笑した。
「思い出すのが遅いよ、兄さん!」
オリヴィエが少しムッとした表情でそう言うと、ベルトランは悪びれもせず、二カッと笑いながら頭を掻いた。
「まぁ、そう言うな、オリヴィエ! それより、あの時の小さい子はどうなったんだ? いい感じの女にでもなったか?」
「ああ。品のいい、優しい感じの女城主様になってたよ! 無論、美人の、ね!」
「ほお! そうか、そうか! で、俺との結婚は?」
その言葉に、オリヴィエはにやりとした。
「勿論、承知してくれたよ! 彼女にとって兄さんは子供の時に助けてくれたヒーローだったらしくて、ずっと好きだったらしいよ」
「待て! ずっと好きって、まさか今までずっと独身だったのか?」
「そうだよ」
「いくつになってたんだ?」
「確か、31だったか……」
オリヴィエのその答えに、ベルトランの顔色が変わった。
「マジでそんな年まで独身だったのか? 俺なんかを想って……」
「だから、そうだって言ってるじゃないか!」
オリヴィエが青くなった兄に少し目を丸くしながらそう言うと、彼は荷物をまとめだした。
といっても、街中で人々と話をしただけなので、槍を持ち直し、着ている服を正す位だったが。
「えーと、兄さん……?」
その姿に驚いてオリヴィエがそう声をかけると、彼は珍しく真面目な表情で尋ねた。
「オリヴィエ、その一途な別嬪さんの城って、ヴィトレに行けばすぐ分かるか?」
「分かると思うよ。小さいけど、灰色の石造りだし。他は皆、白壁に赤い屋根の農家だからな」
「そうか、分かった!」
そう言うと、ベルトランはすぐにそこを後にしようとした。
「待って、兄さん! 今からラグネル嬢の所に行く気?」
「そのラグネルっていうのが、俺のことを想って、独身を貫いてきた別嬪さんのことだったら、そうだよ。そんな話を聞いて、放っておけるかよ!」
「だけど、その……その恰好で?」
オリヴィエのその言葉に、その場に居た者達も皆、ベルトランの姿を眺めた。