想い焦がれるのは。

手のひらをおでこの前で合わせ、ごめんのポーズをしながら謝ってくるのは、今日から同じクラスの浅利 柚ちゃん。
茶色がかった肩までのくるくるの髪が特長的な、可愛らしい子だ。

同じ苗字の人と同じクラスになるのは初めてだった。
さっきクラス発表の紙見たのに気づかなかったな・・・

「わ、私こそ大袈裟に驚いたりしてご、ごめんなさい・・・​」

ああ、なんでこう、おどおど話してしまうんだろう。
きっと柚ちゃんも、変なやつって思ってるだろうな。
と、自己嫌悪に陥っていると、

「そんな、私がいきなり話しかけたからいけないんだよ!顔上げて!ね!」

ゆっくり顔を上げてみると、にこにこした柚ちゃんがいた。

「今日から前後の席だし、同じ苗字同士、同じクラスになれたのもきっと何かの縁だよね。うん。今日から仲良くしてね、千尋ちゃん!」

そう言いながら、柚ちゃんは右手を伸ばしてきた。

これは握手、ってことでいいんだよね・・・?

不安に思いつつも、私も相手の右手に自分の右手を重ねた。

「よ、よろしくね、柚ちゃん。」

人と握手をするなんて何年ぶりだろう。久しぶりに人の手を握った私は、なぜだか涙が出そうになった。

< 4 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop