LOZELO
そういえば。
入院計画を説明してくれた時、冷たい態度で拒絶してしまったなと思い出し、反省した。
「根が真面目すぎて不器用なドクターだけど、紗菜ちゃんのことを助けたいと思ってる気持ちは、申し訳ないけど俺より大きいかも。いや、俺だってもちろん、元気になってくれるのを心から願ってるけどさぁ」
一生懸命さは感じている。
こんな私に向き合おうとしていたから。
言った言葉に、嘘偽りがなかったらの話だけれど。
「紗菜ちゃんが心配だって、毎日こぼしてるよ」
「別に心配してくれって頼んでません」
「紗菜ちゃんのお腹の症状よりも心を気にしてる」
心配されて私が幸せになるなら、いくらでも心配してくれと頼み込むだろう。
私の問題は私しか解決できない。
私が解決できなければ、あきらめるしかない。
17年生きてきて学んだのは、そんな生き方だった。
「嘘だと思って、信じてみたら?」
「どうしてですか」
「江口君は、君が生まれるべくして生まれてきた人間だと気づかせてくれるはずだから」
「江口先生にどうしてそんなことができるんですか」
「信じるか信じないかは、紗菜ちゃん次第だよ」
紗菜ちゃんがあきらめても、江口君はあきらめないから。
断言した神崎先生の瞳は、痛いほど真っ直ぐだった。