文月~平安恋物語
翌日、若い公達が三条邸に遊びに来るからと、大宮は母屋の方へ貴子を呼んだ。
しかし貴子は恥ずかしさのあまり西の対の奥に隠れてしまいたくなる。
「姫、そんなに奥にいないで、もっとこちらにいらっしゃい。御簾があるのだから、外から見られてしまう心配はないのですよ」
恥ずかしさのあまり、扇をかざしながら、おずおずといざっていく貴子の姿を見て、伺候している女房たちも笑い声を上げる。貴子は吹き出る汗を感じながら、大宮の近くに座った。
確かにここからなら、御簾越しに明るい庭が見渡せる。
釣殿の方で、この三条邸のあるじである左大臣が、公達をもてなしていた。
釣殿とは池の上に構えた建物で、水面を渡る風が吹き抜けて涼しい。
残暑の厳しい季節を過ごすのにはちょうどよい場所であった。
公達の一人が横笛を吹き始めた。
風に乗って母屋の方へ音が響く。
今まで自分の住んでいた邸では考えられないほど風流な光景に、先ほどまでの恥ずかしさも忘れ、貴子は目を奪われていた。
しかし貴子は恥ずかしさのあまり西の対の奥に隠れてしまいたくなる。
「姫、そんなに奥にいないで、もっとこちらにいらっしゃい。御簾があるのだから、外から見られてしまう心配はないのですよ」
恥ずかしさのあまり、扇をかざしながら、おずおずといざっていく貴子の姿を見て、伺候している女房たちも笑い声を上げる。貴子は吹き出る汗を感じながら、大宮の近くに座った。
確かにここからなら、御簾越しに明るい庭が見渡せる。
釣殿の方で、この三条邸のあるじである左大臣が、公達をもてなしていた。
釣殿とは池の上に構えた建物で、水面を渡る風が吹き抜けて涼しい。
残暑の厳しい季節を過ごすのにはちょうどよい場所であった。
公達の一人が横笛を吹き始めた。
風に乗って母屋の方へ音が響く。
今まで自分の住んでいた邸では考えられないほど風流な光景に、先ほどまでの恥ずかしさも忘れ、貴子は目を奪われていた。