あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─


曖昧で柔らかだった棘は芯をもって急速に成長し、果てが見えないような天井すらも突き抜ける。風通しが良くなった世界はどうだ?


「きゃあ!」
「っ、な…!千秋?!なんでお前がここに!」


特別に頭が良かったわけじゃない。

俺は天才ではなく秀才のカテゴリーに分類される人間であると自覚している。今までに出してきた結果の全ては己の努力の賜物だ。

その甲斐があって、この時だけは誰よりも速く、鋭く、正確にパズルのピースをはめることが出来た。自分なりの完成図へと向けて。


「な…んで、千秋く……ひいッ!」


穢らわしい行為の最中、本能のままに結合した素っ裸の男と女に冷笑を浮かべた。本当に、反吐が出る。


「なあ、親父。この女がそんなに大切か?」
「…ま、まて、千秋」
「だったら俺の言うことを聞いてくれよ」


躊躇することもなく、美菜の母親の首元にカッターナイフを突き付けて親父を見据えた。こんなに小さなものでも人は殺せるんだよ。


「汚ねえな、そんな粗末なもんおっ勃てて。いい歳したクソ野郎のくせに。……フッ、下半身だけは一丁前に現役かよ。気色悪りぃ」


三人分の重みに耐え兼ねたのか、ベッドはギシギシと耳障りな音を悲鳴として上げている。ああ、ああ、いい感じだ。もっと狂え。
< 112 / 173 >

この作品をシェア

pagetop