あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
 
「なにが目的だ……千秋…」
「ハハ、ホント、今日までどんなに待ったことか。なあ、俺……全部知ってたよ。知ってて耐えてきたんだ。わかるわけないよな、……お前らなんかに俺の気持ちが!」


鋭い刃の背で、薄い首の皮がへこむまで力を込めてまた笑う。


「俺、調べたんだ。村のお抱えの蔵のなかや、図書館で。まあ、あの時だけはアンタが村長で良かったって思えたよ。鍵もうちにあるし、なんでも閲覧出来たからな」
「……千秋」


息子の様子が尋常ではないことを漸く悟ったのか、親父はゆっくりと身体を後退させた。女を守ろうともせず、俺の元に置き去りに。


「村の連中も腐ってる。だって、村人公認の不倫だもんな。でも、さ。他の村では違うだろ?村の外(・・・)では違うだろ?あんた等のオゾマシイ行為、ちゃんと録らせて貰ったから」


そう言ってポケットからスマートフォンを取り出し、慣れた手つきで動画を再生させる。どうやら、顔も、声も、鮮明に収められているようで安堵した。当事者達は見たくもなかっただろうけど。


「SNSで拡散してもいいし、コレを有効に活用出来る方法はなんだってある。もう、この辺りでは住めなくなるなあ。いや、この辺りどころか何処へ行っても、逃げても、人の目が気になるようになるんじゃねえの?この先、一生、二人とも」
「だから…!な、なにが、目的だ…」
 
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