あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
一、神人がひと月籠る聖域には一人だけ世話係をつける事

二、なにがあろうとも祭りは絶対に途絶えさせてはならない事

三、立志式の済んだ十五歳以上の人間だけで行う事

四、身許を伏せ、名と顔を奪われぬよう面を着けて参加する事

五、神人を選出する際には村の最高責任者と神主で決める事


俺はこの「神人がひと月籠る聖域には一人だけ世話係をつける事」に着目した。世話係だなんて(てい)の良い言葉を使ってはいるが、つまりは監視役(・・・)。だとしたらその世話係は自分がするしかないだろう。

そうして、親父の権力を振りかざす。


『美菜ちゃんは神人になる為に長く辛い期間をこの先一人で過ごすことになる。だから、その予行練習じゃあないけど。今から〝独り〟の時間に慣らしておいてあげて欲しい。いきなり一人になるよりも心構えができている方が幾らかマシだとは思わないかい?』


嘘、嘘、嘘だ。

嘘に決まっている。だって俺が一緒に過ごすのだから。それでも。


「じゃあ、また明日」


聖達に笑顔を向け、軽く手を上げた。嘘で塗り固めた壁は、ぶくぶくと肥えて壊せない。戻らない。この時、誰か一人でも俺を止めてくれていたなら、なんて、自分勝手も良いところだな。
< 119 / 173 >

この作品をシェア

pagetop