あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
それでも手放せない。

きっと真面目な美菜のことだから、聖に気持ちを伝えたりだとか助けを求めたりだとか、そんなことはもう出来ないだろう。

汚い、汚い、穢い、俺。

縛って、従わせ、俺がいないと生きていけなくなるように洗脳し、飼い馴らす。暴力と、快楽と、怒り、笑み、ぐるぐると、廻る。


「美菜が好きなのは?」
「……ちーちゃん」
「本当に?」
「うん、…ぅん、」


繰り返せば繰り返すほど虚しくなるだけなのに。

二度とこちらに向くことのない眼差しは、いつも明後日の方向をぼんやりと捉えていた。俺を見ない。誰も見ない。何も見ない。

日々、人としての感情が死んでいく彼女がまともに言葉を喋れなくなった時。そこいたのはただの操り人形。綺麗なだけの人形。造り上げられた、心を失ったニセモノの美、だとしても。
< 132 / 173 >

この作品をシェア

pagetop