あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
美菜であって美菜じゃない。そう理解をするまでに掛かった時間は短かっただろう。皆、頭の回転が速い自慢の友人で、自慢の幼馴染みだった。聡い仲間は慈悲深く、そして素直で実直だ。

幸次の顔から笑顔が消えた。


「やだ、千秋ぃ!止めようよ!もう、止めて!」


綾が悲痛の声で叫ぶ。


「千秋やり過ぎ!」
「……美菜」


早紀が、聖が、


「これ、なに……あの時と…同じ」


幸次が、逃げる。

鬼ごっこの鬼から必死で逃げるように、皆、走る。走る、走る。


「ハハ、あハははははは!そうだよ!もっと本気で!もっと本気で逃げろ!美菜も!お前らも!ハハハハハハハ!!」


笑う。

笑う、笑う。笑いながら、泣いていた。

残酷で、子供で、そうだな、鬼は他でもない俺だ。


「ハハッ、はははは!」
 
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