あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
美菜を煽らせ、美菜を追い詰め、一人、傍観者を決め込んで。


「ほら、幸次!聖、綾!早紀ぃ!もっと美菜に本気を出させろよ!これじゃあ祭りの予行練習にはならないだろ?アハハはははは!」
「……あ゙あ…ゔぅぅ!……あ゙あ゙!」


まるでホラー映画のワンシーンだ。

現実離れした、狂った世界に昔の俺達の面影は一欠けらだってない。終わりの見えない悪趣味な見世物は、このままずっと続くのではないかとさえ思わせた。けれど、逸早く気付いた人間がいる。

この、残酷な遊びを、俺の気持ちを鎮めさせる方法を。


「美菜!こっちに来い!ボサっとしてるな!」
「っ!そ、そうよ!美菜こっち!私を捕まえてみなさいよ!」


手を叩き、小馬鹿にするような素振りで美菜を誘導する聖と早紀。そんな二人を見て、幸次達もハッとして続く。


「……お、おお!美菜ぁ!お前はホントにどんクセえなあ!早く!ほら、こっちだ!」
「わ、私は……アンタなんかに捕まらないんだから!」


笑う。

笑う、笑う、流石だよ聖。
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