あの日、僕等は罪を穴に埋めた─secret summer─
こんな茶番を早く終わらせる為に、必死になってくれる優しい人。優しい四人を、両手を広げて無我夢中で追い掛ける美菜は、俺には目もくれないで真っ直ぐに駆け抜けて行く――そのとき。


「ひーちゃん」


確かに、そう呟いて。美菜は俺達の視界から消えた。


「………は?」


突然、目隠しをされたみたいに真っ暗になって。

けれど、月明かりが俺を照らしていて。肉と骨が、激しく何かとぶつかり合う痛々しい音が遠ざかる。眼球だけを器用に動かし、ここより離れた場所を見降ろした。そこにぼんやりと浮かぶ、白い花。


「美菜?」


足が動く、脳が揺れる。違う、そんなつもりじゃない。こんなこと、違う、望んでなんかない、違う、違う、嘘だ!


「みな?」
 
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